第6話 「ハルマゲドンへの接続」

のちに「秩序の大樹」と呼ばれる大いなる戦い。
大樹の崩壊と共に現れた緑色の少女「全ての命の源」の出現と共に終結した。
・・・か、のように見えた。


「あとひとかけら程度の確証が欲しいの」
「・・・あなたは、懐疑的ですね。大樹を倒した彼らなら・・・」
「だからこそ不安なのよ。その力がもし暴走したらその行き先は、・・・絶望」
「だからあなたは試そうとするのですね。自らを全ての悪と見なされても」
「フフ・・私は既に国際手配されている身だから、お気遣い無く」
「・・・分かりました。あなたに力を貸しましょう。
でも、彼らの命を奪う事は決してあってはなりませんよ・・!」
「感謝するわ♪
もちろん、命の奪うまではしないわよ。
ただ、彼らには死よりも恐ろしい終焉という名の舞台に行ってもらうけどね」



大戦が終結して、人類はしばらくは復興に専念する事になった。

メティー・エステールから、デモン・エクス・マキナ「アポリュオン」を借りていた
アウトン・ゴーマンは、彼女に機体を返却していた。
「そう言えば、メティーがアポリュオンを提供してくれたからこそ、
この大戦が被害最小限にして、思ったよりも早めに終結した要因のひとつだと、
俺は思うんだが、ミー君もそう思うだろ?」
「ミ〜〜♪」


アウトンが、ミー君と研究所の仲間たちと一緒に復興活動をしている一方で、
サンヘドリン軍を始めとする各軍のトップ宛に以下の内容のメールが送信されていた。

“私たち、結婚します。 in 終夏島
メティー・エステール&ソラト”

国際的指名犯として扱われている“メティー”の名が記載されているものの、
あまりにふざけている内容のため、
誰もが終戦後のゴタゴタにつけ込んだ迷惑メールの類だと思っていた。
・・・が、続けて送信されたメールには、
「UNK-01 ザ・ビースト」と「UNK-03 ハーロット」
の画像と情報が詳細に記載されていたのだった。

しかも、問題の場所である“終夏島”には、
今はないはずの“命の欠片”の反応が現れている、
という報告が入ってきたのだった。
欠片は再統合して「全ての命の源」になったと、
誰もが信じていた為、驚きを隠せなかった。

各軍は細心の注意を払い、かつての大戦「秩序の大樹」のように、
武装を整え、問題の島へ集結した。


終夏島にたどり着いた鋼の戦士たちは、
メールに記載されていた、
2体の機体、すなわちザ・ビーストとハーロットの姿を見た。

雄雄しくそびえ立つザ・ビーストと、まるで人間の女性のような姿を持つハーロット。
その前には浮遊する2つの影が・・・。
ザ・ビーストの前に出現したのは、一匹の羊。
ベイバロンの前に出現したのは、ピンク髪の少女。

少女は多くの軍を前にして、高々と声をあげた。
「皆様、遠路遥々私たちの結婚式に来て下さってありがとうございます♪」

それを聞いた戦士たちはどよめいた。
何者かもあまり分からない少女が、ジョークの類かと思われていた、
メールに記載されていた“結婚”の内容を言い始めた為だった。

そのことに気づいた少女は、弁解し始めた。
「ごめんごめん、急にこんな事に言ってもわからないよね。

・・・私は、メティー・エステール。貴方たちが“ハーロット”と呼んでいる、
デモン・エクス・マキナ“ベイバロン”の操縦者よ。

そして横にいる羊ちゃんのはソラト。
驚いちゃうかもしれないけど、貴方たちが“ザ・ビースト”と呼んでいる、
デモン・エクス・マキナ“テリオン”の操縦者なのよ」
「むーー!!」

メティーの説明に各人は驚きを隠せなかった。
「え?あの子がメティー・エステール?・・確か、国際指名されている悪女だっけ?」
「似顔絵が全然似てないじゃない!あの絵は熟女風だから、そもそも別人みたいだし」
「しかもあの“ザ・ビースト”のパイロットが、メティーではなく、
あの羊だなんて、もうわけわかんねーーー!!」

混乱している者たちをいくらかスルーして、メティーは話を続けた。
「“秩序の大樹”攻略おめでとう!そしてお疲れ様♪」
意外な感謝とねぎらいの言葉に、戦士たちはキョトンとする者やテレ顔の者もいた。

しかし、急に彼女の顔が曇りだした。
「・・・でも、いくらなんでも木を倒すのは環境破壊じゃないかしら?」

「な、なに言ってるんだよ!あのデカブツを倒さなかったら、地球そのものが・・・」
「KY!KY!くうきよめーー!!」
戦士たちは当然抗議した。

「・・・確かに分かっている。けど・・・。

・・・貴方たちは、森の番人フンババを殺し、森の木々を伐採しつくした
ギルガメシュ王がどうなったか、・・・知ってる?」
彼女の目は鋭く彼らに向けられた。

戦士たちはその鋭い視線に思わず沈黙した。

「・・・彼の親友エンキドゥは、王の代わりに死んでいったのよ。
森の番人を殺した罪に対する罰として!」
彼女の目の鋭さは増していった。

まぶたを閉じながら彼女は、更に話を続けた。
「ギルガメシュ王を象徴する、かの文明も同じように滅んでいったわ・・・。
だから、貴方たちには・・・」

「“死んでもらいます”とでも言うのかい?」
屈強な戦士の1人が先読みして言い返した。

「・・・極端な話、そうなるわね」
メティーはうつむきながら、答えた。

その言葉を聞いた者たち全てが当然のように激怒した。
「せっかく、世界を救ったのに、勝手に罪人扱いされちゃ困るね!」
「あんた、なにさまのつもりだい?!」
「だいたい、先の大戦を知っているなら、俺たちの戦力を分かってるよな!
たかだか2体でこっちを裁けると思っているのか!!」

騒ぐ戦士たちを沈黙させる一言をメティーは言い放った。
「だからこそ、結婚なのよ!」

「・・・・??」
「えっ??」
「結婚って、もしやそこの羊くんと??」
「それなんて、獣k」
意味不明な言葉に騒ぎが増していった。

その様子を見ているメティーは、こう言い残してベイバロンに戻っていった。
「では、実際に見てもらいましょうか、ヒエロス・ガモスを!!」
時同じくして、ソラトも同じくテリオンに戻っていった。


ベイバロンとテリオンは向き合って、お互いの2つのコアを激しく展開し始めた。

ベイバロンは下腹部から紅き穴を出現させた。
それを見た宇宙海賊軍が叫んだ。
「あいつは、俺らの仲間がへろへろにしやがった攻撃だ、近づくな〜〜!!」

テリオンは下腹部から巨大な剣を出現させた。
それをみたサンヘドリン軍が叫んだ。
「あの剣は手元にデータにないとは言え、あの機体の戦闘力は凶悪だ。
安全確保のため、いったん退避せよ!」

それらの叫びに応じて、全軍が撤退そのものでないものの、
撤退を思わせるかのような退避行動をとった。
秩序の大樹を打ち倒した彼らも、この2体の異常さ、
そして何より先のメティーの言葉を危険視したからの懸命な判断だった・・・。

両機体のエネルギーがドンドン大きくなっていった。
ベイバロンの虹色のヴェールの如きものが大きくなっていった。
それはオーロラのように周囲に広がり、両機の姿を包み隠した。
最後に見えたのは、テリオンの大剣がベイバロンの紅き穴に吸い込まれていく光景だった。

その瞬間、空は真っ黒な雲に覆われ嵐が吹き荒れ、
波は荒れ、島の火山が突如噴火し始めた。
想像を絶する天変地異に全軍誰もが身動きを取れずにいた。

そして、天空から極太の雷が1本、海めがけて降り注いだ。
海の底を開くかのごとき一撃により、前代未聞の衝撃が全土に広がった。
その衝撃は、まるで世界を破壊するかのような勢いだった。
実際、周囲の景色はがらりと変わり、
世界の終末のような死屍累々とした空間に変わっていることに、
各々が気づき始めた。

天変地異がいくらか収まった時、戦士たちは、
1体の機体が海の中から上がって来るのを見た。
これには10本の角と7つの頭があった。
それらの角には、10の王冠があった。
獣にも似たその機体は、豹に似ており、手足は熊のようで、口は獅子の口のようであった。

獣の如く、その機体は激しく咆哮していた・・・。


次回、最終話 「ゲッターデメルンク」に続く・・・。