原初の混沌の母ティアマト
製作期間:2011年12月21日〜2012年1月24日

ver.3 (主線を少し直しただけ。とりあえず完成です)

年賀状に使う予定・・・だった絵です。(※ただし、年末の時点ではラフのままでした)
気づけば、神話・伝承系のイラストを久しぶりに描いていました。
(※最後に描いたのは2005年に描いたアスタルテ様)

ティアマト様は、古代バビロニア神話の原初の女神で塩水=海を神格化した存在。夫は淡水の神アプスー。
詳しくは詳しいサイトの説明を参照されることをお勧めしますが、忙しい人のためにざっくりまとめると、

多くの神々を生んだティアマトとアプスーでしたが、若い神々があまりに騒がしい為に苦しんでいました。心優しいティアマトは我慢していましたが、アプスーは若い神々の殺害まで考えているのでした。しかし、若い神の一人エアは殺られる前に殺れ理論に基づいたのか、先んじてアプスーを殺害してしまったのです。なお、その際、アプスーの力を取り込んだエアは水神の属性などをものにしました。

優しかったティアマトは、夫を殺された怒りで破壊的な面を見せ、若い神々に挑む為にたくさんの怪物を生み出しました。更に、息子にして夫であるキングーに主権の力が宿る「天命の書版」を持たせました。

一方、若い神々は怒れる母に恐れをなしましたが、エアの息子であるマルドゥクは彼女に挑みました。彼は通常の神の2倍の能力を持つほど強く、ティアマトとの一騎打ちで暴風で弱らせ、矢で心臓を抜くことで彼女を打ち負かしたのです。(なお、大勢の怪物たちの活躍したシーンは・・・ない)

マルドゥクは、倒されたティアマトの死体を余す事無く使い、(現在の)世界を創り上げました。また、キングーの血から人間を生み出しました。


北欧のユミル、中国の盤古、といった死体創世説話のひとつとして取り上げられるティアマト様。その裏には、旧体制の神々を貶めマルドゥクを主神として据える創世記叙事詩「エヌマ・エリシュ」の意図が垣間見られます。なお、神々がドライな感じがするのは、シュメール・バビロニア神話ではよくあること(汗)

彼女は竜としての姿をしているかは確定できませんが、少なくとも生み出した子どもたちの中に“竜”がいたので、“カエルの子はカエル”の理論に習えば、“竜の母は竜”ないし、竜の要素を持っていてもおかしくない・・・はず。
キリスト教では、“混沌の母”である彼女は“秩序の父”たるキリストの神から見れば、またに対極の存在。「ヨハネの黙示録」のサタンが化けたとされる赤き竜(レッドドラゴン)と同一視されることに。ゆえに、様々なメディアの大半は“邪悪なドラゴン”として、主にボス格で描かれ、そして倒される悲しき存在。ティアマト様が「全ての母」という面も軽視されており・・・。

ゆえに、今回描く時は、いかに「セクシーな女性」=母、として描くことを大事にしました!人間としての体は、「ラルース世界の神々神話百科」に掲載されている写真「壷を手にする海の女王ティアマト」(前2040-1870年頃。アッシリアの丸彫り像)がモデルとなっています。この像は、普通の人間の女性の姿をしているで、当時は普通に信仰されていたのだと思います。今見ても高貴さ漂う美人さんです☆

頭の角や耳、そして翼は新紀元社「女神」にティアマト様が記載されている部分に、一部は獣、一部は蛇、一部は鳥が混合した怪物のような姿と記されているのをヒントに描きました。ラミアなどに萌える私にとって、こういう要素は外せません!

従えている竜が全7体なのは、彼女が生み出した怪物の1体ムシュマッヘが七岐の大蛇にちなんで。ムシュマッヘ自体がティアマトの戦闘時の姿説もあるので。多色なのは、テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に出てくるティアマトが、「クロマティック・ドラゴン」(万色竜)と言われるように多色の竜の頭を持っていることに対抗したものです。D&Dは黒、青、緑、赤、白の5つ頭に対して、こちらは金、白(光=日)、黒(闇=月)、赤(火)、青(水)、緑(木)、茶(土)と七曜にしてみました。(※ティアマトとはあんまり関係ありませんが)
3Dゲームにすると、全ての竜が一斉にブレス攻撃すると恥部が見えてしまう!・・・が、カメラアングルでギリギリ見えない、という浪漫を潜ませています(笑)